今回の話題は、筑前煮とお煮しめの違いです。
どちらも、煮物であると言えるのですが、調べてみると明確な違いがありました。
食文化って、ちゃんとした意味があっておもしろいですね。
筑前煮とお煮しめの違い作り方にある!
筑前煮とお煮しめのもっとも大きな違いは、それぞれの作り方にあります。
筑前煮は、食材を油で炒めてから全部を同時に煮ます。
ですから、30分ほどの時間で作ることができる煮物です。
お煮しめは、「煮しめる」という調理法が名前になっています。
この「煮しめる」調理法は、「煮汁が残らないように時間をかけてじっくり煮る」というものです。
お煮しめの調理法には、もう1つ特徴があります。
それは、食材を1品ずつ煮ることです。
その目的は、食材によって味のしみ方や味付けの加減が違うこと、煮崩れや色移りしないようにすることにあります。
なぜ、そのようにていねいに煮しめるのか?
お煮しめは、「ハレの日」となる特別な行事がある日に出されるものだからです。
「盛り付け」の「彩り」を大事にするので、1品ずつ煮るというのが基本となるようです。
ちなみに、「ハレの日」というのはWikipediaでは次のような説明があります。
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民俗学や文化人類学において「ハレとケ」という場合、ハレ(晴れ、霽れ)は儀礼や祭、年中行事などの「非日常」、ケ(褻)は普段の生活である「日常」を表している。
「ハレとケ」とは、柳田國男によって見出された、時間論をともなう日本人の伝統的な世界観のひとつ。
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私たちが家庭料理として食べる場合は、厳密には「ハレの日」限定としている風習は少なくなっていると思います。
「1品ずつ煮しめる」というのも、知らない人が多いのではないでしょうか。
今では、「煮物」ということで、筑前煮も、お煮しめも、同じように考えているのが現状だと思います。
お煮しめの作り方の動画を見てみてください!
こちらは、下茹での段階では食材を別々にして、味付けの煮込みは同じ鍋の中で仕上げられています。
次は、筑前煮。
一番の違いは、油で炒めてから煮るというところですね。
正月のおせち料理には、食材に縁起の良いものが選ばれます。
たとえば、昆布は「よろこんぶ」の語呂合わせ。
お煮しめの食材の場合は、次のように縁起を担ぐことができるという説明がありました。
* ニンジン
梅の花の形に飾り切りすることで、新春らしさを出す。
* レンコン
よく言われるところでは、レンコンは穴が空いているので、「先を見通せる」という意味を込めて選ばれます。
* ゴボウ
その形から、長く生きるという意味で縁起を担ぎます。
* シイタケ
亀の甲羅のようにして、長寿を祝うものとします。
六角形に切ると良いようです。
* サトイモ
サトイモは、子孫繁栄を意味します。
サトイモは一株でいっぱい収穫ができ、収穫したものは「親芋・子芋・孫芋」に分けることができるからだそうです。
地域性についてはどうか?
筑前煮は、福岡県北部、西部にあたる筑前地方の郷土料理です。
お煮しめは、全国的なもの。
調べてみると、お煮しめには地域による特徴もあるようです。
味付けについては関東と関西では違うように、お煮しめの「甘がらさ」や「濃さ」は地域によって異なるようです。
もっと言えば、家庭料理とした場合には、家庭ごとの味付けや食材の選び方にも違いがあるとのこと。
しかし残念ながら、お煮しめについて地域ごとの特徴がわかるような分布図みたいなものは見つかりませんでした。
おおまかな情報では、以下のようなものがあります。
ゴボウ、ニンジン、コンニャク、サトイモ、干しシイタケ、レンコン、タケノコなどの食材が共通。
それに、肉類として鶏肉か牛すじあたりが加わるところあり。
魚介類、練り物が使われる地域もある。
山菜が豊富な地域では、山菜が入っていることが多い。
また、単品で煮しめとしているものもあるそうです。
たとえば、レンコンの煮しめ、タケノコの煮しめという感じ。
まとめ
はじめに「食文化って、ちゃんとした意味があっておもしろいですね」としたのは次のような見解があったからです。
筑前煮は、時短料理。
お煮しめは保存料理。
筑前煮はすぐに食べるので、油で炒めて食材を煮込む。
お煮しめは、おせちのようにしばらくおいても食べられるように、時間をかけて煮しめるというようなことです。
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